日本は、世界有数の自然災害大国といっても過言ではありません。2022年9月にも、過去最大規模といわれる台風が日本列島に上陸して、九州など多くの地域で甚大な被害をもたらしたばかりです。毎年のように台風が襲ってくるわけですから、太陽光発電を設置する際にも台風の被害を受けることを想定しておかなければなりません。台風の影響で太陽光パネルが破損したり、飛来物の衝突によって太陽光パネルのガラス部分が割れてしまうなど、実際に被害が報告されています。
地球温暖化に伴う環境変化により、異常気象が発生する頻度が高まる中、太陽光発電を運営するうえで、どのようなことに気を付ければいいのでしょうか。また、事故が起きてしまった時、どんな保険が頼りになるのでしょうか。今回の記事では、過去に台風がもたらした太陽光発電の故障・事故事例や、保険の選び方について解説していきます。
ソーラーパネルが飛んだ!嘘のような本当の話
台風によるトラブルの事例として多く挙げられるのが、太陽光パネルや発電設備の飛散です。太陽光パネルの耐風圧は、JIS(日本産業規格)の規定で風速毎秒62mと定められています。取り付け強度に関しても、沖縄県と鹿児島県南部で風速毎秒40m超、その他地域では30m超と決められているので、通常の強風程度では太陽光パネルが吹き飛ぶことはありません。
しかしながら、大型台風の影響で、太陽光パネルが設置場所から外れて周辺に被害をもたらした事例が複数存在します。2012年10月、沖縄県に上陸した台風によって、マンション屋上に設置した太陽光パネルが駐車場に落下する事故が発生しました。取り付け部分もろとも地面に衝突し、駐車していた車のガラスが割れてしまいました。
2018年9月には、佐賀県のアパートで太陽光パネルが架台ごと外れてしまい、隣の民家の屋根を直撃する事故が起きました。飛散のせいで、なんともう1軒隣の家にも被害が出たのです。幸いにも、当時この2軒にいた計5人に、怪我はありませんでした。
2021年1月、こちらは台風ではないものの、強風の影響で栃木県にあるアパートの駐車場に、太陽光パネルが落ちてくる事故が報告されました。アパート脇の高さ約10mのところに設置されていたといい、パネルで車が下敷きになってしまったのです。車に乗っていたアパート住人が軽い怪我を負う事故に発展しました。この日、宇都宮地方気象台の統計開始以来、1月の最大瞬間風速を記録する強風が吹いており、他の市でも倒木などの被害があったそうです。
台風時の損害は保険でまかなえるの?
もし台風によって太陽光パネルが損傷したり、周辺機器が故障してしまった場合、保険によって損失補償してもらうことはできるのでしょうか。まず注意しておかなければいけないのは、太陽光パネルを購入した時のメーカー保証では、台風の被害に関しては基本的に保証対象外となることです。通常どおり使用するうえで経年劣化などの理由で故障した時は無償で修理してもらえますが、残念ながら台風のケースだと補償は期待できません。
そこで加入しておきたいのが、自然災害も対象に含まれる住宅用火災保険です。保険会社によって、部材の盗難や飛来物の衝突による被害を保証対象外とするものも一部存在するため、個別にしっかり内容を確認する必要はあります。強風によって太陽光パネルが飛散して第三者にぶつかり怪我を負わせるケースだと、住宅用火災保険では対処できません。第三者に対する補償を受けたい場合、「賠償責任保険」に加入しておくべきでしょう。たとえば、先程の事例で紹介した太陽光パネルが落下して車に衝突しガラスを破損させた事故では、「賠償責任保険」に入っていれば損失補償が保険によって実施されます。どんな事故でも100%補償してくれるとは断言できませんが、事故内容を保険会社が精査して、特に契約者に過失など無ければ、基本的には被害者に賠償金が支払われる仕組みです。
太陽光発電の施工業者の中には、個別に保険会社と契約して補償を用意しているケースもあります。保険は、事故が起きてから加入しても遅いですから、設置時に保険について相談してみるといいでしょう。
太陽光発電の事故事例を紹介
台風による太陽光発電システムの故障に関しては、様々な事例が紹介されています。その中でも、特に頻発するケースを集約すると、以下の2つが挙げられます。
●強風によって太陽光パネルやパワーコンディショナーが損傷
●豪雨で土砂崩れが起こり太陽光パネルや周辺機器が故障
一例を紹介すると、兵庫県姫路市で豪雨がつづき、野立て太陽光発電所内で土砂崩れが発生する事故が起きました。傾斜のある土地に盛り土して太陽光発電を設置したのですが、豪雨によって整備した部分の土が流され、土砂崩れが起き大量の太陽光パネルやパワーコンディショナーが破損したのです。もともと、地盤の弱い土地や傾斜のある土地は太陽光発電に適していないのですが、半ば強行的に設置したことで、事故に繋がったわけです。他にも、大阪府にある野立て太陽光発電所において、強風により太陽光パネルの耐荷重を上回る負荷が生じたのと、強風にあおられた砂利が太陽光パネルのガラス面に衝突したことで、なんと1万枚以上のパネルが破損する事例も報告されています。
大型の台風による数年に一度レベルの強風だと、パネルの破損に加えてケーブルや架台・金具など部材も破損、発火が起きて近隣の建物まで損傷するケースもありました。強風と大雨が重なる場合、機器が水びだしになりショートを起こし、出火や感電の原因となりうるのです。
まとめ
台風による太陽光発電の被害を最小限に抑えるためには、以下のようなポイントをしっかり守っていくことが大切です。
●傾斜がきついところや地盤が緩いところを設置場所に選ばない
●災害に耐えうる基準を満たす適切な工事を行ってくれる施工会社に依頼する
●メンテナンスを定期的に実施して、万全の状態を保っておく
●メーカー保証だけでなく、自然災害による損害を補填してくれる保険に加入する
高額な費用をかけて発電所を運営する以上、一度設置したら場所の変更は難しいです。だからこそ、事前にハザードマップでリスク度合いを調査したり、過去に災害による事故が近辺で起きていないか確認することが重要です。
太陽光発電は原則、屋外に設置するものです。台風の被害を完全に避けるのは非現実的とはいえ、万全の対策を講じて被害を最小限にすることは誰にでもできます。これから太陽光発電システムを導入する方は、自然災害は起きるものだと考え、しっかり対策を行ったうえで発電を開始すると安心度が増すのではないでしょうか。