太陽光発電のO&M

太陽光発電を外注?O&Mについて徹底解説

規模を問わず、太陽光発電システムを導入してから数年が経過すると、何かしら故障やトラブルが起きる可能性があります。せっかく多額の初期費用を投じて太陽光発電を設置するわけですから、できる限り長期間、安全安心に稼働してもらいたいですよね。自家消費するにしても投資目的で購入するにしても、設備が最大限のパフォーマンスを発揮し、発電量を高い水準で維持したいと誰しも思うはずです。
しかしながら、太陽光発電も機械ですから、どうしても経年劣化は避けられません。太陽光パネルは20~25年、パワーコンディショナーは10~15年とおおよその寿命は決まっています。半永久的に使い続けることは非現実的としても、劣化のスピードを遅くしたり、故障頻度を減らす対策を講じることは可能です。
2017年施行の「改正FIT法」により、低圧の太陽光発電設備もメンテナンスが義務化されたことで、多くの企業がメンテナンス事業を開始しました。太陽光発電を長く運営するうえで、昨今「O&M」という概念が急速に浸透しています。そこで本記事では、「O&M」とは一体どういう意味なのか、基本的な概要からおすすめの企業、費用面についても解説しますので、ぜひ一読してください。

太陽光発電のO&Mとは?概要や市場規模

太陽光発電のO&Mとは、ずばり「太陽光発電所の”運用管理”と”保守点検”」を表す言葉です。O&Mの「O」とは「Operation」、「M」は「Maintenance」の頭文字をそれぞれ取ったものです。Operationは「運転管理」、Maintenanceは「保守点検」を意味します。
O&Mの目的は、長期的な安定稼働だとされており、発電量に影響を及ぼす不具合や故障、さらには事故や災害を未然に防ぐために必要なのです。万が一トラブルが発生したとしても、管理を適切に行っていることで、被害を最小限に留める意図もあります。
もう少し細かく分類すると、O&Mは以下の4つに分けることができます。

●発電量監視
●故障発生時の復旧作業
●定期点検
●敷地管理

発電量の監視は、太陽光発電を運営していくうえで最も大切なことの一つです。パネルメーカーに無料の修理対応を依頼する際も、過去の発電量のデータなど具体的な数字を提示しないと、対応してもらいない可能性があるのです。端から見ると綺麗な状態でも、内部で故障が発生している場合もあり、発電監視装置をつけて故障の予兆をいち早く検知しましょう。発電量の監視以外にも、設備のどこかに異常が生じていないか確認する定期検診、雑草対策や侵入・盗難対策、太陽光パネル洗浄や周囲の清掃を行うことも重要です。
O&Mが太陽光発電の運営において不可欠なものだと説明したところで、市場規模はどのぐらいなのかも触れておきます。「改正FIT法」が施行された2017年時点で約470億円、翌年の2018年には約570億円に増えており、その後も増加傾向を辿っています。
全国に設置される太陽光発電設備が増えるにつれて、O&Mの市場規模も拡大することが想定されます。現時点では、2030年に1200億円を超える見込みです。

太陽光発電O&Mの大手はどこ?

O&Mの市場規模が拡大するということは、当然ながら新規参入企業も増加して競争が激しくなることが予測できますよね。皆さんも、いざO&Mを依頼しようとなった時、どの企業を選べばよいか迷ってしまうかもしれません。名の知れた大手企業なら絶対に安心、と断言はできないものの、実績を積み重ねている企業はそれだけ多くの依頼を受注しているということですから、ある程度信頼は置けると思われます。

たとえば、「株式会社スマートエナジー」は、再生可能エネルギーに特化して事業を行う企業です。業界トップクラスのシェアを誇り、2019年にはO&M契約量の企業ランキング1位に立った実績があります。営業所は開設済みが全国に29拠点、さらに28拠点を開設予定のようです。合計3100mW以上の発電所を管理しており、O&Mだけでなくソリューション、資産マネジメント、ドローンとAIを組み合わせた収益改善システムなど、事業を拡大させる方針を掲げています。
もう一つ、東証プライム市場に上場している「リコーリース株式会社」を紹介します。全国に100mW以上の太陽光発電システムを所有する同企業は、自らが運営する発電所の管理に基づいたO&Mサービスを提供しています。「発電分析実施による発電量改善」「メンテナンス会社変更による費用削減」「パネル洗浄による発電量改善」など、依頼者の相談によって様々な対応を行ってくれます。低圧の発電所1件からの相談も可能ですから、個人も気軽に問い合わせすることができるでしょう。

株式会社ウエストホールディングスのグループ企業「株式会社ウエストO&M」も実績が非常に豊富ですし、「ユアサ商事株式会社」「株式会社ミライト・ワン」なども東証に上場する企業として信頼があります。それ以外にも、「株式会社エネテク」「株式会社SANWA未来」「テクノケア株式会社」など、非上場企業の中にも人気が高いO&M企業が多数ありますから、各企業の特徴や提示する条件を比較しながら、お気に入りの一社を見つけてください。

O&Mの費用はどれくらい?

O&Mを業者に依頼した場合、どのくらい費用がかかるのでしょうか。業界内では一般的に、低圧、高圧、特別高圧の3段階に料金体系が区分されていることが多いです。低圧は、容量10kW以上50kW未満のことで、年間10万円~15万円が相場といわれています。高圧は、50kW以上2000kW未満、特別高圧は2000kW以上となり、年間100万円~200万円かかります。もちろん、容量によって差が生じるだけでなく、業者によって価格も異なるため、複数の業者から見積もりを出してもらうべきでしょう。
メガソーラーと称される大規模な発電所に関しては、年間200万円以上かかります。面積が広いため作業負担が大きくなり、小さな故障一つで全体に影響を及ぼす恐れがあるため、より高度な専門性と経験が求められるのです。O&M業者によりますが、料金体系を明瞭にするため、10kW~20kWなら●●円、20kW~30kWなら●●円と細かく値段設定しているところもあります。上記で紹介したとおり、数多くの業者が存在するので、激しい顧客獲得競争が展開されています。

まとめ

O&Mは、発電量の低下を最小限に抑えることができるという点をしっかり覚えておいてください。これは、「発電量を増加させる」と同じ意味ではありません。機械である以上、経年劣化はどうしても起こりえますが、簡潔にいうと壊れるまでの時間をいかに長くするか、ということです。
寿命が20年とされている太陽光パネルでも、メンテナンスを怠ると15年も経たずに故障して交換せざるを得ないかもしれません。そうすると費用がかさんで、太陽光発電における収益が実質的に低下します。それを避けるのがO&Mの意義です。将来的に日本全国で太陽光発電の普及が進むと、競争激化によりO&M費用も低下傾向になることが期待できます。長く安心安全に発電を続けるために、O&Mともしっかり向き合っていきましょう。


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